建設業が直面する「四重苦」

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2023.10.07

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建設業が直面する「四重苦」

コロナ禍前半の「歴史的低水準」を経て、足元の企業倒産は急増している。2008年のリーマン・ショック前後ほどの水準までは到達していないものの、コロナ禍前の水準までは増加している。
なかでも、長らく低水準が続いていた建設業の倒産がとくに増加が目立つ。
実質的に無利子・無担保の「ゼロゼロ融資」をはじめ、各種のコロナ支援策が順次縮小・終了したことで、資金繰りが行き詰まる中小・零細企業が相次いでいる。
こうした実情について、帝国データバンクが毎月集計しているマクロの倒産データを元に分析したい。まずは「ゼロゼロ融資後倒産」だが、2023年1~8月の累計で419件判明している。

前年同期(255件)の1.7倍に急増するとともに、すでに2022年の年間合計(386件)を上回っている。直近8月も62件と、集計開始の2020年7月以降で今年6月(64件)に次いで月間2番目の件数を記録した。

続いて「後継者難倒産」だが、2023年8月は56件を数え、前年同月(34件)を大きく上回り、過去最多だった2022年10月に並んだ。

2023年1~8月の累計も368件となり、年間最多件数を更新するペースで推移している。業種別では、「建設業」(13件)が最も多く、「製造業」(11件)、「サービス業」(10件)などが続いた。

「人手不足倒産」も足元で増加が目立ってきた。2023年8月は26件判明し、前年同月(13件)から倍増した。2023年1~8月の累計は150件となり、初めて8月時点で150件に到達している。

「物価高倒産」は建設業をはじめ幅広い業種で発生している。

2023年1~8月の累計は503件に達しており、前年同期(150件)の3.3倍に急増している。個別の倒産事例を見ると、原材料やエネルギーコスト高騰の影響が大きいほか、人件費高騰や価格転嫁難により破綻に至るケースも目立ってきた。

このほか、社会保険料や税金といった「公租公課」の滞納が要因となった倒産も増加してきている。件数自体はまだ少ないながら、2023年は7月時点で65件判明し、前年同期(33件)の約2倍となった。

コロナ禍の特例措置として猶予されていた公租公課の支払いが順次再開されるなか、多くの中小・零細企業でその支払い負担が重荷となっている。

2023年の企業倒産は8月時点で5449件に達し、前年同期(4037件)をすでに約1400件も上回っている。

このペースで推移すれば、年間件数は10月にも昨年1年間の件数(6376件)を上回る見込みであり、2015年以来8年ぶりとなる8500件台の到達も視野に入る。
(帝国データバンク情報統括部・内藤修)