倒産件数は741件 29カ月連続で前年同月を上回る 9月としては10年ぶりに700件超

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2024.10.08

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倒産件数は741件 29カ月連続で前年同月を上回る 9月としては10年ぶりに700件超

概況・主要ポイント
倒産件数は741件(前年同月679件、9.1%増)と、29カ月連続で前年同月を上回った。9月としては2014年(785件)以来、10年ぶりに700件を超えた
負債総額は1311億8700万円(前年同月6951億1000万円、81.1%減)と、パナソニック液晶ディスプレイ㈱の法的整理があった前年同月を大幅に下回った。負債トップは、プラスチック代替素材を製造していた環境経営総合研究所の246億円
業種別にみると、7業種中6業種で前年同月を上回った。『サービス業』(前年同月178件→209件、17.4%増)が最も多く、9月としては2008年(201件)を超え、過去最多となった。『小売業』(同151件→159件、5.3%増)では、「飲食店」(同61件→68件)の増加が目立った
主因別にみると、「販売不振」が622件で、全体の83.9%を占め、過去3番目の割合だった
態様別にみると、「特別清算」が約6年ぶりに14カ月連続で20件を上回った
規模別にみると、負債「5000万円未満」(450件)が最多。資本金『個人+1000万円未満』の倒産が531件となり、全体の71.7%を占めた
業歴別にみると、『新興企業』が211件となり、12カ月連続で200件を超えた
地域別にみると、9地域中7地域で前年同月を上回った。『近畿』(前年同月170件→180件、5.9%増)は、24カ月連続で前年同月を上回った。2024年1-9月の累計では、「高知」など11県が2023年通年の件数を上回った

業種別
7業種中6業種で前年同月を上回る 『サービス業』は9月としては過去最多
業種別にみると、7業種中6業種で前年同月を上回った。『サービス業』(前年同月178件→209件、17.4%増)が最も多く、『小売業』(同151件→159件、5.3%増)、『建設業』(同125件→135件、8.0%増)が続いた。『サービス業』は、9月としては2008年(201件)を超え、過去最多となった。一方、『運輸・通信業』(同39件→37件、5.1%減)は、3カ月連続で前年同月を下回った。
業種を細かくみると、『サービス業』では、労働者派遣など「広告・調査・情報サービス」(前年同月66件→76件)が増加。『小売業』では、「飲食店」(同61件→68件)の増加が目立った。『運輸・通信業』では、「道路貨物運送」(同31件→26件)が減少した。

倒産主因別
「販売不振」の構成比83.9%は、過去3番目の高水準
主因別にみると、「販売不振」が622件(前年同月528件、17.8%増)で最も多かった。全体の83.9%(対前年同月6.1ポイント増)を占め、過去3番目の高水準となった。内訳を業種別にみると、「サービス業」(前年同月136件→178件)が最も多く、「小売業」(同128件→139件)が続いた。「売掛金回収難」(同5件→5件)などを含めた『不況型倒産』の合計は629件(同542件、16.1%増)となり、29カ月連続で前年同月を上回った。
「放漫経営」(前年同月16件→6件、62.5%減)、「経営者の病気、死亡」(同32件→21件、34.4%減)はともに2カ月連続で前年同月を下回った。
※倒産主因のうち、販売不振、輸出不振、売掛金回収難、不良債権の累積、業界不振を『不況型倒産』として集計

倒産態様別
「特別清算」は、約6年ぶりに14カ月連続で20件を上回る
倒産態様別にみると、『清算型』倒産の合計は720件(前年同月661件、8.9%増)となり、全体の97.2%(対前年同月0.1ポイント減)を占めた。『再生型』倒産は21件(同18件、16.7%増)発生し、3カ月連続で前年同月を上回った。
『清算型』では、「破産」が698件(前年同月640件、9.1%増)で最も多かったものの、2カ月連続で700件を下回った。「特別清算」は22件(同21件、4.8%増)と、2018年8月以来約6年ぶりに14カ月連続で20件を超えた。
『再生型』では、「民事再生法」が20件(前年同月18件、11.1%増)発生し、個人が15件、法人で5件発生した。

規模別
負債額『5000万円未満』が最多、小規模企業の倒産が目立つ
負債規模別にみると、「5000万円未満」が450件(前年同月406件、10.8%増)で最も多く、「1億円以上5億円未満」が130件(同130件)で続いた。「5億円以上10億円未満」は、17件(同19件、10.5%減)と減少しており、小規模企業の倒産が目立っている。
資本金規模別では、『個人+1000万円未満』の倒産が531件(前年同月487件、9.0%増)となり、全体の71.7%を占めた。

業歴別
業歴10年未満の『新興企業』は211件、12カ月連続で200件超
業歴別にみると、「30年以上」が245件(前年同月220件、11.4%増)で最も多く、全体の33.1%を占めた。このうち、老舗企業(業歴100年以上)の倒産は11件(同9件、22.2%増)発生した。
業歴10年未満の『新興企業』〈「3年未満」(前年同月24件→28件、16.7%増)、「5年未満」(同49件→46件、6.1%減)、「10年未満」(同124件→137件、10.5%増)〉は211件(前年同月197件、7.1%増)と12カ月連続で200件を上回った。内訳を業種別にみると、「サービス業」(同63件→81件、28.6%増)が最も多く、「小売業」(同46件→51件、10.9%増)、「建設業」(同35件→36件、2.9%増)が続いた。

地域別
9地域中7地域で前年同月を上回る 11県が2023年通年の件数を超える
地域別にみると、9地域中7地域で前年同月を上回った。最も件数が多かったのは、『関東』(前年同月236件→271件、14.8%増)で、「埼玉」(同18件→31件)の増加が目立った。『近畿』(同170件→180件、5.9%増)は、24カ月連続で前年同月を上回った。一方、『中部』(同109件→96件、11.9%減)は、3カ月ぶりに前年同月を下回った。
最も増加率が高かったのは『中国』(前年同月26件→40件、53.8%増)で、9月としては2013年以来11年ぶりに40件となった。『北陸』(同17件→25件、47.1%増)は、7カ月ぶりに前年同月比40%を超えた。
2024年1-9月の累計では、「高知」など11県が2023年通年の件数を上回った。

景気DI
2024年9月の景気DIは44.6、3カ月連続で改善
2024年9月の景気DIは前月比0.3ポイント増の44.6となり、3カ月連続で改善。国内景気は、インフラ整備の工事拡大や外出機会の増加などで上向き傾向が続いた。
9月は、インフラの整備や、防災・災害復旧工事などの建設関連のほか、人手不足を解消する省力化のための設備投資関連が景況感を押し上げた。物流量の増加が貨物運送業界にプラスの影響を与えたほか、2度の3連休が身近なレジャー需要を喚起した。また、インバウンド需要をベースに宿泊関連は好調だった。一方で、人手不足による受注機会の逸失や自動車部品の在庫増、猛暑による特需の一巡、食品値上げなどにともなう買い控え、豪雨などの自然災害はマイナス材料だった。

今後の見通しは底堅く推移
今後は、実質賃金の継続的な上昇、金利や為替レート、株価などの金融市場の動向などが注目される。観光産業の回復やDXの推進、GX政策の拡大のほか、人手不足へ対応する設備投資の実行は好材料となろう。さらに、生成AIの普及や半導体の需要拡大もプラス要因である。一方で、2024年問題にともなう物流コストの上昇やインフレの進行、家計の節約志向、拡大する国際的な緊張などは下振れ材料となる。また、石破政権による経済政策の内容や米大統領選の行方は注視すべきであろう。今後の景気は、個人消費や企業の設備投資などが下支えし、底堅く推移していくとみられる。

今後の見通し
『粉飾倒産』が急増、年間最多を更新へ
不適切な会計処理の末、経営破綻に追い込まれる『粉飾倒産』が急増している。2024年の粉飾倒産は9月までで74件判明し、集計を開始した2016年以降で同期間(1-9月)における最多を更新。このままのペースで推移すれば、年間最多件数(2019年・84件)を更新するのは確実視される。9月は、プラスチック代替の素材メーカー「環境経営総合研究所」(負債246億円、会社更生法、東京)や、太陽光発電事業の「旭機工」(負債52億8300万円、民事再生法、東京)などが、粉飾発覚による対外信用の失墜から倒産に追い込まれた。
足元では、金融機関の間で融資先の“バンクミーティング入り”に関する話題が飛び交っている。なかには、“世紀の大粉飾”として昨年話題を集めた「堀正工業」(2023年7月破産、東京)のように、多くの金融機関が粉飾決算を見抜けなかったケースも少なくない。ここ数年の粉飾決算の特徴のひとつとして、金融機関に借入金の返済猶予や追加支援を申し入れた際に発覚する事例が相次いでおり、アフターコロナの局面ではこうした動きが相次ぎそうだ。

“目利き力”厳しく問われる時代に
金融庁は8月30日、2024事務年度の金融行政方針を公表した。数ある方針の中で注目されるのが「事業者の持続的な成長を促す融資慣行の確立」の項目。事業の実態や事業から生み出される将来キャッシュ・フローといった事業性に着目した融資のあり方についてより一層の検討を行い、事業者の持続的な成長を促すという。まさに「言うは易く行うは難し」だが、金融機関だけでなく一般の事業会社でも、いわゆる“目利き力”が厳しく問われる時代になる。
主要行等向けモニタリング方針の中で記載された「必要に応じて個別債務者の自己査定や償却・引当等の状況を確認する」との一文にも注目したい。50前後の金融機関が欺かれた堀正工業の巨額粉飾事件のような、金融機関の信用リスク管理態勢に懸念を抱かせる案件が続くなかで、金融庁は個別債権(融資先)の資産査定も辞さない姿勢を示した。これにより、各金融機関がこれまで以上に企業を見る目が厳しくなるのは明らかだろう。「金利のある世界」が戻ってきたなかで、金融機関の選別からふるい落とされる企業が一定数出てくるに違いない。

2024年度・2024年ともに、年間倒産件数は11年ぶり1万件台へ
自民党の総裁選が9月27日に行われ、新総裁に石破茂・元幹事長が選ばれた。「追加利上げをするような環境にあるとは考えていない」との発言を機に一時的に円安が進むなど、金融市場にも少なからず影響を与えている。帝国データバンクが9月17日に発表した「企業が新政権に求める経済関連政策に関するアンケート」によれば、「中小企業向け支援策の拡充」「物価高対策」「個人消費の拡大策」が上位を占めた。岸田前政権の基本路線は踏襲されることになりそうだが、今後は、新総裁が打ち出す物価高対策を中心とする経済対策に注目したい。
2024年度上半期の企業倒産は4990件となり、前年同期(4208件)を18.6%上回った。物価高、人手不足、追加利上げなどで企業の経営環境が二極化するなかで、年度下半期も企業倒産が減少に転じる要素に乏しく、2024年度は11年ぶりの1万件台となる見通し。また、直近9月の倒産件数は741件を数え、29カ月連続で前年同月を上回った。年ベースでみても、2024年1-9月は7294件と前年同期(6128件)を19.0%上回っており、2024年の年間件数も11年ぶりの1万件台を視野に、このまま緩やかな増加が続く見通しである。
(帝国データバンク)